かわいそうな母

娘に「身内を失った人の気持ちは同じ経験をした者でないとわからない」というと、「確かに私にはわからない」と言った。

母は娘にとって身内ではなかったのだ。

母は孫娘のために、羽子板を送り、3歳と7歳の着物を作り、学資保険に入り、帰るたびに500円玉貯金でためた貯金箱をくれ、私たち家族のためにたくさんの援助をしてくれた。娘の成長を楽しみにしていた母。

でも、母も上手に表現できず、娘を連れて帰っても抱くわけでもなく、淡々と接していた。

私が娘に「どれほどおばあちゃんがあなたを愛しているか」を語ればよかった。しょっちゅう連れて帰ればよかった。

とにかく、母には身内は最後まで私だけだったということだ。

なのに母をそまつにしてしまった。

「取り返しがつかないこと」それは、人の死だ。時間さえも取り返せる気がする。

生きてさえいれば、そこからやりなおせるから。

母の人生をかけて貯めたお金を私たちに注いでくれたのに、感謝しない娘や夫。

彼らは他人だから仕方がない。他人に期待せず、自分が、私自身が、勇気を出して、本当の気持ちを、「仲良し母娘になりたい」と母に伝えればよかったのだ。

20年もひとりぼっちにして、ほんとにごめん。

早くそばに行きたい。この申し訳ない気持ちから逃れたい。